障がい者グループホームの開業を決めたとき、私が考えていたこと
「障がい者グループホームなら、自分にもできるかもしれない」
「社会の役に立ちながら、事業として収益も得られる」
私が障がい者グループホームという仕事を知ったとき、そう感じました。
それまで訪問鍼灸をしていた私にとって、障がい福祉サービスは未知の世界でした。
それでも、話を聞くほどに興味が湧きました。
「これなら、やる価値があるかもしれない!」
一方で、コンサルタントの説明を聞いても、どこか腑に落ちない。
何が引っかかっているのか、自分でもうまく説明できませんでした。
それでも私は、開業へ向けて動き始めました。
その後、実際にグループホームを開業し、経営を続ける中で、当時は見えていなかった現実を知ることになります。
この記事では、これから開業を考えている方に向けて、私が経験した3つのことをお伝えします。
① コンサルタントをどこまで信用するのか
② 開業前に何を調べ、何を確認するのか
③ 家族の反対や協力をどう考えるのか
これは、開業を成功させるための必勝法ではありません。
私が何を考えて開業し、その後どんな現実に直面したのか。
その経験を、これから挑戦する方の判断材料として残したいと思います。
1.コンサルタントを信用すれば、開業はうまくいくのか?
「自分が探していたものは、これだ!」と思った
私が障がい者グループホームという事業を知ったきっかけは、信頼していたメンターから届いたメールマガジンでした。
案内されていたプレセミナーに参加したとき、私は強く興味を持ちました。
「自分が探していたものは、これかもしれない」
訪問鍼灸とは別の事業を探していた私にとって、社会貢献と収益を両立できるように見えたのです。
そして、開業について学ぶため、100万円以上の研修費を何とか捻出しました。
研修期間は約3か月。
大阪のセミナールームには、毎回少なくとも50人以上の参加者がいたと記憶しています。
私も必死でした。
知らない世界のことを、短期間で少しでも多く理解しようとしていました。
100万円以上を払っても、何を質問すればいいのか分からなかった
研修では、講師にいろいろな質問をしました。
例えば、
「和室が多い賃貸住宅は人気がないのでしょうか?」
「2階にもトイレが必要でしょうか?」
といったことです。
今振り返れば、もっと重要な確認事項があったと思います。
しかし当時の私には、それらが大切な質問でした。
そもそも、何が分からないのかさえ分かっていなかったのです。
講師は質問に答えてくれました。
ただ、実際に経営を始めてから直面した問題は、研修中に私が想像していたものとは違っていました。
開業できることと、経営を続けられることは別だった
実際に運営を始めると、次々に問題が起こりました。
利用者さんとの関わり。
職員の採用や支援体制。
ご家族や関係機関とのやり取り。
行政への確認。
そして、経営を続けるためのお金の問題。
どれも、事業者として自分が向き合わなければならないことでした。
開業の手順を知っていることと、開業後の問題を解決できることは違う。
これは、経営を始めてから実感したことです。
私が受けた研修や支援では、実際の経営で直面した問題に十分対応できない場面もありました。
だからといって、コンサルタントがすべて役に立たないと言いたいわけではありません。
問題は、何を教えてもらえて、何を自分で判断しなければならないのかを理解していなかったことです。
私が地元の行政書士にも依頼した理由
私は、コンサルタントだけに頼ることに不安を感じていました。
そこで、地元の障がい福祉サービスに詳しい行政書士にも相談し、指定申請に関する手続きを依頼しました。
当然、追加の費用がかかります。
当時は、無駄な出費ではないかと思ったこともあります。
しかし結果として、地域の制度や障がい福祉サービスについて相談できる相手とつながれたことは、私にとって意味がありました。
今なら、開業を考えている方にこう伝えたいと思います。
コンサルタントを信用するかどうかより、どこまで支援してもらえるのかを確認すること。
そして、最終的に責任を持つのは自分自身だということです。
【経営を経験した今、思うこと】
コンサルタントは、事業者の代わりに経営してくれるわけではありません。
契約前には、開業後の相談対応、支援範囲、追加費用などを確認しておくべきだったと思います。
2.情報を集めすぎると、開業できなくなるのか?
決断は早かった。でも、何から始めればいいのか分からなかった
私は、障がい者グループホームを始めようと決めるまで、それほど時間はかかりませんでした。
ところが、決断したあとに困りました。
「さて、何から手を付ければいいのだろう?」
研修で教わったことを頼りに、不動産会社へ足を運びました。
インターネットでも賃貸物件を探しました。
自分で調べたことといえば、開業を考えている地域にグループホームが何件あるのか、障がいのある人がどのくらいいると推計されるのか、といったことでした。
今振り返ると、十分な調査とは言えませんでした。
私は、開業すれば入居してもらえると思っていた
当時、私の頭の中には大きな期待がありました。
「障がい者グループホームは、世の中の役に立つ仕事だ」
「自分にも社会貢献ができる」
「それでいて、事業として収益も得られる」
私は真剣にそう思っていました。
そして、必要としている人がいる地域に開業すれば、入居希望者も集まるだろうと考えていました。
しかし、実際は違いました。
地域に障がいのある人が暮らしていることと、その人が自分のグループホームに入居したいと思うことは、まったく別の話です。
今なら当たり前だと分かります。
でも、当時の私は、その違いを十分に理解していませんでした。
「知らなかったから挑戦できた」という本音もある
ここで、一つ正直に書いておきたいことがあります。
もし開業前に、障がい福祉の現場で起こる問題や経営の難しさをすべて知っていたら、私は挑戦を諦めていたかもしれません。
知らなかったからこそ、一歩を踏み出せた。
そんな部分があったのも事実です。
だから私は、すべてを理解するまで挑戦してはいけないとは思っていません。
ただし、今はもう一つ付け加えたいことがあります。
知らないから挑戦できることと、知らないまま開業してよいことは違います。
障がい者グループホームは、利用者さんの生活を支える事業です。
指定基準、人員配置、支援体制、資金計画、地域のニーズ。
これらは、開業前に確認する必要があります。
挑戦する気持ちは大切です。
しかし、その気持ちだけで利用者さんの生活や職員の仕事を支えられるわけではありません。
【経営を経験した今、思うこと】
「開業できるか」だけでなく、「開業後も続けられるか」を調べる。
当時の私には、この視点が不足していました。
3.家族が反対しても、自分の決断を貫くべきなのか?
私は、結果を出せば家族も理解してくれると思っていた
私は以前、家族に反対されても、自分が正しいと思ったことは進めるべきだと考えていました。
なぜなら、家族の生活を守るために、新しい収入の道を探していたからです。
建築の仕事から異業種へ転身し、専門学校に通い、鍼灸師の資格を取得して独立しました。
そのほかにも、株式投資、賃貸住宅経営、暗号資産、アフィリエイトブログなど、さまざまなことに挑戦してきました。
しかし、すべてがうまくいったわけではありません。
少し取り組んでは、自分には難しいと感じて諦めたこともありました。
それでも、私は新しい可能性を探し続けていました。
「今の環境が息苦しいなら、自分の行動でその環境を広げるしかない」
そう考えていたからです。
「家族のために頑張っているのに、なぜ分かってくれないのか」
当時、訪問鍼灸の収入について、妻と口論になることがありました。
妻には、集客のためのチラシのポスティングも手伝ってもらっていました。
私としては、何とか家族の生活を守りたい。
そのために新しい事業へ挑戦しようとしていました。
しかし、妻は私と同じようには考えていませんでした。
私は、
「なぜ、この思いが分からないのか」
「家族のために、こんなに考えているのに」
と思っていました。
今振り返ると、私は自分の考えを理解してもらうことばかり求めていたように思います。
家族のために始める事業だからといって、家族がその事業を望んでいるとは限りません。
この違いを、当時の私は十分に理解していませんでした。
自分一人で何でもできると思っていた
私は建築現場の監督として、さまざまな仕事を経験してきました。
交渉やクレーム対応もありました。
異業種へ転身し、資格を取り、独立もしました。
だから、多少難しいことが起きても、自分で何とかできるという自負がありました。
しかし、障がい者グループホームの経営では、その考えが通用しない場面がありました。
私は、自分が思っていたほど何でもできる人間ではありませんでした。
精神的にも、想像していたほど強くありませんでした。
事業を続けるには、自分一人の力では足りない。
そう気づくまでに、それほど時間はかかりませんでした。
妻に協力をお願いして、事業の形が変わった
私は妻と話し、協力をお願いしました。
妻は、人とのコミュニケーションに強みがあります。
私とは違う視点で物事を考え、職員や利用者さん、ご家族、関係者との対応でも、その力を発揮してくれています。
現在では、妻がグループホームの対外的な対応の多くを担っています。
私は訪問鍼灸やグループホームの裏方の仕事を担当し、役割を分けています。
もちろん、今でも意見が違うことはあります。
夫婦だからといって、すべての考えが一致するわけではありません。
それでも、以前のように一人で何とかしようとするのではなく、妻を一緒に事業を担う存在として考えるようになりました。
これは、私にとって大きな変化でした。
家族の協力は、当たり前ではない
以前の私は、家族に反対されても、結果を出せば理解してもらえると思っていました。
しかし今は、違う考えを持っています。
事業を始める本人には、挑戦したい理由があります。
一方で、家族には今の生活を守りたいという思いがあります。
どちらか一方が間違っているわけではありません。
だからこそ、事業の可能性だけでなく、資金や生活への影響、家族にどのような負担がかかるのかを話し合う必要があると思います。
家族の理解を得ることと、家族に協力してもらうことは別の問題です。
私の場合は、妻の協力によって、事業を続けるための体制が大きく変わりました。
しかし、すべての家庭で同じ結果になるとは限りません。
【経営を経験した今、思うこと】
「家族のために始める」という自分の思いだけで、家族の協力を当然だと考えてはいけない。
これは、私が経営を通じて学んだことの一つです。
4.もし開業前の自分に伝えられるなら
私が障がい者グループホームを始めようと思ったとき、そこには期待と可能性がありました。
コンサルタントから学び、物件を探し、新しい事業に希望を持っていました。
しかし、実際に経営してみると、開業前には想像していなかった問題が次々に起こりました。
それでも、あのとき挑戦したこと自体を否定するつもりはありません。
ただ、もし当時の自分に伝えられるなら、次の3つを伝えたいと思います。
1.コンサルタントに任せきりにしないこと。
何を支援してもらえるのかを確認し、最終的には自分で判断する。
2.開業できるかだけでなく、経営を続けられるかを考えること。
利用者さんの生活を支えるための体制や資金について、開業前から確認する。
3.家族の生活と負担を、自分の挑戦とは別の視点から考えること。
家族のためという思いがあっても、家族の考えが同じとは限らない。
障がい者グループホームは、開業することが目的ではありません。
利用者さんの生活を支えながら、事業を続けていく仕事です。
開業前には見えなかったことが、経営を始めてから見えてきます。
これから挑戦しようとしている方には、私の経験を成功例としてではなく、一つの判断材料として読んでいただければと思います。
この記事が、ご自身の開業計画をもう一度確認するきっかけになれば嬉しく思います。
※この記事は私自身の開業・経営経験を振り返ったものです。障がい福祉サービスの指定基準や制度、申請手続きなどは地域や時期によって異なります。実際に開業を検討する際は、管轄自治体や専門家に最新の情報をご確認ください。
